2010年08月17日

『キャタピラー』



ストーリーはココで(Yahoo映画)


珍しく見たいと思った日本映画。

戦争で残虐のかぎりをつくした帰還傷痍兵と彼に複雑な感情を持ちつつ献身的に尽くすその妻が終戦を迎えるまでのお話。

テーマは戦争の酷さではありますが、通り一遍的なメッセージではない印象。
登場人物は極端に少なく、狭い農村を舞台に久蔵(大西信満)とシゲ子(寺島しのぶ)の異様な、重い関係性が描写されています。

辛うじて帰還したものの、その姿は直視する事のできない異形の夫。
久蔵は性欲、食欲の生きる本能をむき出しにしたただの肉の塊になっている。
そのほとんど動物状態の夫に絶望感を持ちつつ、それでも献身的に世話をするシゲ子。

caterpillar1.jpg



軍神として立派な勲章を貰い、新聞で褒め称えられても救いようのない現実に直面してだんだんとやりきれない怒りをためてゆき、爆発させるシゲ子の複雑な内面を寺島しのぶさんが圧巻で演じており、くぎづけでした。

彼女は今の芸能界では貴重な、独特な雰囲気を持つ女優さんですね。
昭和の雰囲気があって、もんぺがしっくりきて。妖気もある。
「女優」という呼び方が落ち着く人。

戦時中に化粧をしている訳がない、との事ですっぴんで演じているそうですがとてもお肌が綺麗。


ストーリーの中で久蔵に子供が産めない事が理由で暴力を受けていたと説明が入るのですが、どういう経緯でこの2人は結婚したのかなー、と。
異形の夫を見た時にその驚きは単なる恐怖の為なのか、それとも愛情があって自分の好きな人がひどい姿で帰ってきた事によるショックなのか、どっちだろうと。

シゲ子の気持ちがくるくる変わるのですが、その表現がすごい。
動物の本能丸出しの久蔵に対する嫌悪、絶望、哀れみ、憎悪、過去の感情、愛情、立場が逆転した事による軽蔑・・・。

特に鬱憤が溜まって、久蔵を連れ出し、軍神として見世物にし、崇めれられる久蔵に尽くす妻という立場を演じる事で少しだけゆがんだ感情を発散させるシーンが印象的。

そして久蔵もシゲ子に犯される受身の立場になってから、自分が戦地でやった残虐な事をフラッシュバックする様になる。
ものすごく恐ろしいその光景から逃げ出そうとするけれど、四肢を無くした彼は逃げ場がない。
その時に初めて彼が受身の立場の人間の気持ちを理解するのですね。

この久蔵役の大西信満さんの目の感情表現が本当に鬼気せまる。
それにしても「お国の為」という言葉が戦時中は全ての狂気の理由、免罪符になるという事なんでしょうね・・。
勲章なんてただのバッジだし、世間にいくら賞賛された所でそれは建前。
本音はストーリーの出だしの義理の妹と義父の会話が全てですよね。
シゲ子の目の前にあるのはめちゃくちゃにされた人生だけ。


caterpillar2.jpg


その他、形ばかりのまぬけなやり訓練やバケツレースを真剣にする村民の女達、バンザイで兵士を送り出す村民と対象的に、国民総狂気の空気の中で日の丸の旗を適当に振ってみたりする唯一正気である知的障害がある男をクマさん(篠原勝之)が演じており印象的でした。
最初パチパチパンチの人かと思ってましたが・・(笑)

ラストでシゲ子と「戦争終わった!バンザーイ!」と国民が本当は思っているであろう事を言って喜ぶシーンも。


映像的には農村風景、昔の土間のある日本家屋がとても綺麗。

何より、一番心に迫ってきたのは元ちとせの歌う主題歌。
泣いたのはこの歌、メロディー、歌詞、魂からしぼる様な彼女の歌声でした。


他の寺島しのぶさんの作品を見てみたい、と思い帰り道さっそくツタヤに寄りました(笑)

posted by kk at 18:36| 兵庫 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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